“日本三大杉”と言う言葉があります。木曽のヒノキ、青森のヒバ、秋田のスギ、を称して、日本が誇る美しい代表の木とされています。従って秋田のスギは日本一として秋田人の自慢するところです。このスギの大木がなんと2800本もあるのが『仁鮒の森』です。樹齢は150~300年、幹周5m、高さ50m。いっせいに天に向かって、まっすぐに伸びています。この中の最大のものは高さ58m、これ一本で55坪の木造住宅が一軒建つそうです。まるで定規をあてたようにまっすぐ林立するさまは実に『見事で見事で、さすが“日本一”と思わせます。古くは戦国時代、伏見城の築城に使われた、という記録もあるそうで、昔から丹精こめて保護されてきたことを窺わせます。しかし、暫く、この森を歩いていると何となく淋しいような、物足らないような気持ちになるのはなぜでしょうか。思うに、それはあまりに“見事に揃いすぎている”という、不自然さ、異常さを感ずるからだと思われます。特に、これまで素晴らしい原生林を見て来だけに人造的に厚い保護が加えられたこの森に違和感を覚えるのでしょう。考えてみれば人間の社会も同じ事のように思えます。学校や社会においてソツのない優等生ばかり集めた集団というのはいっこうに面白くなく、物足らない気持ちにさせます。私は時折、昔の事を思いだしますが、そのとき決まって登場する人物達は“はみ出し者”“落ちこぼれ”等と言われる人達で、何ともいえない懐かしさで蘇つてまいります。
Googleマップ 秋田県能代市二ツ井町田代字田代
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(次)藤里駒ヶ岳
神々の住む森 白神山地に入るには、青森側、秋田側と2つのルートがあります。私は秋田側の藤里町から黒石林道を経て藤里駒ケ岳へとはいってゆきました。13万ヘクタールに及ぶ広大な山地の南側にあたります。林道 ...
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(前)百尋の滝
神々の住む森 私を救出するために入山した2人の森林管理官と遭遇できたのは18時30分くらいでした。『ケガはありませんでしたか?』『はい、お世話かけました』『ここは迷いやすい所なんです。地元のキノコ採り ...
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