十和田国立公園奥入瀬(おいらせ)渓流の北に蔦(つた)温泉というものがあります。静かな一軒宿ですがこの周辺には蔦七沼と呼ばれる透明度の高い水をたたえた沼が点在しています。いずれも豊かなブナの森に囲まれて美しい水景色を演出しています。中でも『赤沼』は最も奥地にあって秘境色の強い所です。落葉が厚く積もった山道を渓流沿いに登ってゆきます。フカフカの絨毯の上を歩くような心地で進んで行くとブナやトチの巨木が次々に現れます。うっそうとした原生林ですが暗くはなく明るい陽光の中の快適な森林浴です。30分ほど登ると突然、目の前が開けて『赤沼』が現れました。まるで鏡です。底まで透き徹る清澄な水面には赤倉岳が影を落として、一幅の名画を見るようです。誰もいない山中は しーんと静まりかえって物音ひとつしません。こんな時に私はテントをかついで何日もこういう山を縦走してあるけたらなあ、と思ってしまいます。そんな体力もなくなった今『少なくとも 10年前に今の立場(退職してフリー)になれたら…』などと ぜいたくなことを思うのです。
Googleマップ 青森県十和田市大字奥瀬
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(次)蒸ノ湯温泉
神々の住む森 今回の旅は“森を歩く”がテーマでしたが、色々な温泉にも漬かることが出来ました。何しろ東北は“温泉天国”ですから。《昔は秘湯、今は健康ランドなみの大混雑-乳頭温泉郷》秋田県田沢湖高原の奥に ...
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(前)藤駒湿原
神々の住む森 砂利だらけの走りにくい林道を2時間。ようやく白神山地の南東部、藤里駒ケ岳の麓に到着します。ここから山頂までさらに2時間歩くのですが、その途中にあるのが『藤駒湿原』です。ブナ林に囲まれ所々 ...
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