白神山地に入るには、青森側、秋田側と2つのルートがあります。私は秋田側の藤里町から黒石林道を経て藤里駒ケ岳へとはいってゆきました。13万ヘクタールに及ぶ広大な山地の南側にあたります。林道の途中から歩きにくくなり約2時間、最後の40分は急登の連続で“ぜいぜい”息を切らしながら山頂へ。そこは360°の大展望。汗をぬぐいながら山、また山の代パノラマに見入ります。特に北西方向は白神の核心部分『世界遺産ブナの森』が綿々と連なっています。ここは“全面入山禁止”となっており、文字通り“原始の森”でその全貌は殆ど知られていません。僅かにマタギと呼ばれる山の民がここに足跡を残し“聖なる森”として代々守ってきたのでした。NHKの『プロジェクトX』に このマタギの頭領がゲストとして呼ばれ、実に意味深い名言を吐いております。司会者が質問します。『白神はどうしてそんなにいいのですか? どこに魅力があるのですか?』 頭領はしばらく考えてこんなふうに答えました。『人間の匂いがしねえからええ』 原始の森は人間を拒んでいる。人間臭いものは全くない。だから白神は最高なのだと。これは動物や植物の目線から見た言葉です。森の小鳥や獣が人間を恐れ 匂いを察知して逃げ出す。それと同じ立場で発言しています。思えばマタギほど森を大事にしてきた人種はいません。彼達は森の生き物と同じ感性を持つことで、やっと森の神々から、その“分け前”を取ることを許されたのでした。私はこの頭領の言葉を思い出しながら白神をいつまでも眺めていました。
Googleマップ 秋田県山本郡藤里町粕毛
-
(次)藤駒湿原
神々の住む森 砂利だらけの走りにくい林道を2時間。ようやく白神山地の南東部、藤里駒ケ岳の麓に到着します。ここから山頂までさらに2時間歩くのですが、その途中にあるのが『藤駒湿原』です。ブナ林に囲まれ所々 ...
続きを見る
-
(前)仁鮒の森
神々の住む森 “日本三大杉”と言う言葉があります。木曽のヒノキ、青森のヒバ、秋田のスギ、を称して、日本が誇る美しい代表の木とされています。従って秋田のスギは日本一として秋田人の自慢するところです。この ...
続きを見る