私を救出するために入山した2人の森林管理官と遭遇できたのは18時30分くらいでした。『ケガはありませんでしたか?』『はい、お世話かけました』『ここは迷いやすい所なんです。地元のキノコ採りの人の踏跡や、けもの道が交錯して、その上をヒバが被っていますからね。』『沢に迷いこんだら崖の上にでたのですが…』『ええ あのままつき進んでれば 確実に遭難でしたね。あれから先はずっと断崖で百尋の滝というものになって切れ落ちてます。何年か前に地元の人が あそこで転落して死んでます』『………』『まあ ひとりで入る山ではないですね。道はあってないようなものですから。我々も必ずチームで行動します』私はただただ恐縮して駆けつけていただいた労に謝するばかりでした。生死の分れ目は紙一重と言いますが 種久の好条件が重なって私は助かったなと思います。まず①天気が快晴だったこと②携帯電話が通じたこと③日没までに対応可能な時間にSOSが送れたこと④そんなに深く山奥まで入ってなかったこと⑤崖の上で引き返し尾根上で待機したこと⑥救援が来るまで じっと動かなかったこと。等条件がいくつかありどれひとつ欠けても危ないところだったと思います。しかし“なぜこんな目に会ったか”については“単独行”とか“経験不足”とか色々、原因が考えられますが、その奥にあるものについて はっきり感じとったことがあります。それは大自然に対する敬虔な気持ちをいつの間にか失っていた。そえが森の神々の怒りを招いたと。翌日、私は溪谷の下を歩き“百尋の滝“まで行ってみました。あの断崖の上を昨日、歩いていた。と思うと何だか夢のようでした。改めて大自然の深さを感じながら”太古の森“に別れを告げました。
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岩手県和賀郡西和賀町沢内若畑9地割
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